キッズBEE対策にも。「算数ラボ」で思考力の正体を考える。

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思考力という漠然とした能力を鍛える

「受験問題は、知識より思考力を問う問題に変わりつつある。」
「日本の小学生は世界的に見て、考える問題が苦手な傾向にある。」
「計算練習ばかりしていても、考える力は身につかない。」

子供の学力の話になると最近はどこでも、「思考力が大事」「受け身の勉強では思考力は身につかない」と繰り返し言われます。
自分の頭で考えることはそれはもちろん大事なのですが、なんだか、塾で教わる勉強を一生懸命こなすお子さんに対して、無責任にダメだしされているようにも思うのは私だけでしょうか。

ただ、悲しいことに、事実ではあります。
中学受験の問題も考えさせる問題が多く出る傾向になっています。特に難関校では、見たことのない問題に対処する力を見るために、敢えて受験生が練習したことのない問題を狙って出してくる学校もあります。

また、算数の得意な小学生がしのぎを削るテストである「算数オリンピック」や「ジュニア算数オリンピック」も、思考力を問う問題を中心に出題されています。中でも、「算数オリンピック」の低学年向け試験である「キッズBEE」では、もはや計算などの数字の操作はあまり出ず、論理的に思考して解く問題が並んでいます。

しかし、このように、思考力が重視されているのはわかるのですが、思考力ってじゃあ実際なんなのよ、どうやって練習するのよ、という話はあまりされません。
この手の問題は、「対策で解けないように作ってある」のですから、対策が難しいのはある意味当たり前なのですが、ではこのような問題を解くには、生まれつきの頭の良さが全てなのでしょうか。
そう言い切ってしまうのはあまりに無責任です。思考力を鍛える方法、もう少し考えましょう。

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思考力の正体を定義する

そもそも思考力とは何かがわからないと対策できませんから、ひとまず思考力の正体を定義してみましょう。
算数の問題を解く際の思考力とは、
「自分が解き方を知らない問題を、自分の知っている材料だけで解く力」
と定義することができるでしょう。

この思考力を鍛えるには、知らない問題を解く練習が大事です。
「見たことない」問題を見て、「でも、解ける!」に変わる感覚を数多く体験することが、思考力を強化することにつながります。
とはいえ、数学的知識の少ない低学年の子にとっては、その練習問題となる
「見たことはないが考えればわかる問題」というのがあまりありません。

ここに特化した問題集が、算数ラボです。
算数・数学思考力検定、という検定を主催しているiML国際算数・数学能力検定協会が、思考力検定で出題された問題をベースにして発行している問題集です。


算数ラボ 考える力のトレーニング8級

収録されている問題は、「一番重いものはどれ」 「うそをついている人は誰」など、普段あまり系統立てて対策はできないけれども、考えればわかりそうと思えるようなものが150問以上も収録されています。
計算をほとんど使わなくても、算数の問題ってこんなに作れるんだと驚くほどです。

ひととおり見ておくと、低学年向けでは「キッズBEE」で見覚えのある問題が出るかもしれません。
また、中高学年向けの級では、過去の入試問題も収録されていますから、実戦的な入試問題対策として役に立つことでしょう。
しかし後述するように、本質的にはこの問題集は、パターン演習として使うべきではありません。

さてこちらの算数ラボは、10級から5級までが出版されています。10級が小1~2年生程度から、5級は中1程度まで、となっていますが、普通の算数の単元のように学年の垣根がはっきりしているものではないので、お子さんの思考力に合った級からスタートする必要があります。

そこで、まずチェックしておきたいのが、公式HPです。
ここは無料のレベルチェック用問題が非常に充実しています。

http://www.shikouryoku.jp/challenge/index.html
(算数・数学思考力検定確認テストダウンロードページ)

「算数・数学思考力検定」の過去問サンプルの他に、各級の問題集を解き終わった後の「確認テスト」が、全ての級に対して2セットずつ公開されています。
全部プリントアウトすると、それだけでちょっとした問題集ができそうなボリュームです。とても一日や二日で解き切れる量ではありませんから、購入を少しでも迷っているようであれば、今すぐプリントアウトしてみるのが良いでしょう。そしてじっくり試してみて、お子さんに合っていると思われる級を購入されるのが良いと思います。
各級の難易度は少しずつ上がっていきますが、明確に違いがわからないかもしれません。せっかく無料なのですから、急がず下の方の問題からやってみましょう。

考えることがとても苦手な子には

ここで気を付けておきたいのは、こういった問題は、得意な子と苦手な子に分かれることです。特に、学校の成績が良くても、慎重だったり失敗するのを怖がってしまう子は、わからない問題が出ると、ひるんで固まったり、「わからなーい」とすぐに答えを見ようとしてしまうことがあります。そんなお子さんに対しては、特に、下の級からゆっくり始めて、自信を付けながら級を上げていきましょう。

下の級の問題は、日常生活でもイメージの沸きやすい問題も多く、落ち着いて考えれば解ける問題ばかりです。自信をつけながら練習すれば必ずできるようになってきますから、「うちの子は考える力がないんだわ」とがっかりせずに、無理せず下の級から始めましょう。解けるようになればペースが上がり、1冊2週間もあれば解けるようになるでしょう。それから級を上げていく方が、トータルで見れば短時間で済みます。

「○年生用の問題集なんて」と自分の学年より下の級に抵抗を示すお子さん(お母さまも)もいるでしょう。しかし、「算数ラボ」シリーズは「初見で自分で解き切る」練習に主眼をおくことが大切です。
先取りして上の級の問題集を買って答えを見て、解法を覚えれば賢くなるというものではありません。「どんな問題が出ても自分の力で解決の糸口を見いだせる」という実感を持たせることに時間をかけましょう。

解けずに固まっているお子さんを見るのは辛いものですが、自分で考える練習ですから、周りが一切ヒントを与えずに見守りましょう。
せっかくの「見たことのない問題を解く練習」を逐一、このパターンはこう解くんだよ、このパターンはこう、と横から口をはさんでしまい、パターンに慣れた対策をしてしまうと、初見の問題が出てきた時にお手上げになってしまいます。

これは「算数ラボ」や他の勉強に限った話ではありません。考える力は、塾や親が代わってあげられるものではなく、お子さん個人のものです。いつかきっと、思考力という自分だけの武器を手に入れて、見たこともない難問に立ち向かう。そんなお子さんの姿を信じて、周りは手を出さずに見守ってあげることが、本物の思考力を育てる一番の道になるでしょう。

Photo credit: woodleywonderworks via Visualhunt / CC BY

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