過去問は20年分解くのが良いって本当?
秋になり、中学受験も学校説明会の季節になりました。
小6の受験生の方は、いよいよ志望校を決定し、願書をもらう時期ではないでしょうか。
さて志望校を決定したお子さんに対して、この時期、塾によっては、さっそく志望校の過去問を解くようにとの指示を出すところがあります。それも、過去問をできる限り過去にさかのぼって(20年分とか!)解くようにとか、同じ過去問を繰り返し3回解きなさいという指導をしているところまであるようです。
しかし普段の授業時間も長くなり、宿題も多いこの時期に、1年分3時間はかかる過去問20年分を3回ずつ解くというのは負担も半端なものではありません。
この時期に志望校の過去問を解く場合は、出題傾向の確認にとどめておく方が無難です。
確認のためだけですから、5年前くらいの過去問を1年分解いて復習すれば十分です。
なぜ5年前かというと、直近の過去問には別の使い方があるからです。
直近3年分の過去問は、1月まで取っておくのが賢い利用法
去年、一昨年、その前の年の3年分の過去問は、年が明けて、受験直前の1月になってから解きましょう。この過去問は、受験直前の1月になって、志望校対策が済んだと思えるようになってから、本番と同じ時間配分で解いてみて、きちんと合格点が取れるかの確認に使うといいでしょう。そうして自信をつけて受験本番に臨むのです。
まだまだこれから知識を身につける時期である6年秋の段階で過去問をすべて解くのは慎重にしましょう。それで合格可能性が低く出てしまったら、志望校への合格を遠いものに感じてしまうからです。その後、解きなおしで合格点が取れても、自信にはつながりません。
過去問を解くうえで大事なことは、
「この感触なら本番はたぶん大丈夫」
というイメージをお子さんに植え付けることです。
「こんな問題、あと3か月で解けるようになるのかしら・・」
と親も子も不安になるようなら、時期尚早です。
過去問で勉強する前に、塾の通常カリキュラムで弱点をつぶすべきです。
ちなみに、もう秋の段階で合格点が取れそうだというお子さんは、別の意味で、今の段階で過去問を解かせるべきではありません。
「あれっ、今受けても受かるじゃん!」
と思うと、人は誰でも必ず気が緩むからです。
「今はちょっと足りないところがあるけれど、このままのペースで勉強すれば、受かりそうだ」
と思わせるのが正しい使い方です。
過去問対策は、専門の講座でやる方がずっと効率的
過去問を直前まで解かなくて、大丈夫かしら、という心配はもっともですが、そのために塾では通常講座とは別に学校別対策講座を用意して、各学校の出題傾向を踏まえた講義をしてくれます。大手進学塾はその分析力や情報量が最大の売りであり、学校別対策講座はそのノウハウの集大成です。大手進学塾には個人では到底分析できないほどの情報がありますから、それを買うという気持ちで受講するのが賢い方法です。学校別対策講座は、普段通っていない塾でも単科で受講できる場合もありますから探してみると良いでしょう。
過去問より学校別対策講座のほうが効率が良い理由は他にもあります。実際の入試問題は、難易度から見ると3種類に分類できます。一つ目は、受験生のほとんどが正解する問題、次に、逆にどの受験生もほぼ解けない問題、最後に、解ける人と解けない人の差が付きやすい問題の3つです。重点的に対策すべきなのはもちろん最後の問題です。学校別対策講座は特にこの部分を抽出しているので、過去問を解くより短時間で済むのです。
過去問全体を最初から最後まで解くやり方では、多くの受験生にとって易しすぎる/難しすぎる問題に時間を取られすぎます。ですから、あまり過去問そのものにこだわらない方が効率よく志望校対策を進められるでしょう。
過去問そのもので勉強するという考え方は、情報の少ない時代ならともかく、現在の中学受験ではちょっとナンセンスです。意地悪な言い方をすれば、過去問とは今年は出ない問題の集まりでもあるからです。
過去問から出題傾向を分析するのは周りの仕事
過去問を数多く解くことで、自分でも問題の傾向を実感するべきだという指導をする塾もあります。
もちろん傾向を把握することは大事なことです。けれど、それは小6の受験直前期に子供自身がやることでしょうか。出題傾向の分析は、プロに任せておくべきです。今通っている塾がある場合はそこで志望校対策に特化した講座を受講することが基本です。
例えば遠方の学校を受験する場合などで、今通っている塾でお子さんの志望校の対策講座が開講されていない場合は、Z会などの通信添削でも、筑駒コース、開成コースなど多くの難関校向けに学校別の直前講座を開講しているところがありますから、探してみるのも良いでしょう。
そのようにして対策講座などを探した上で、どうしても情報が少なく、自宅で出題傾向を確認する必要がある場合は、お子さんではなく親御さんが傾向を分析しましょう。
まず志望校の10年分の過去問を用意します。それから、今通っている塾のテキストの目次のページをコピーして、過去問で出題された全ての問題が、塾のテキストのどの単元から出題されているか、カウントするのです。
この過程で、「国語は記述問題が多い」とか「社会の知識が多く問われる」などの傾向が実感できるかもしれません。そうした傾向がわかれば、塾のテキストの該当部分に立ち返って弱点がないか復習しておきましょう。
このように、過去問は、普段使いの問題集としてではなく、資料集として使うべきです。過去問をたくさん解くことにこだわりすぎず、今まで通りに塾の授業をきちんと身につけることを重視して、直前期の時間を有効に使いましょう。