周りより早くから通塾してみたけれど、意外に進度が遅くて物足りない。
低学年で時間に余裕があるうちに、どんどん先の授業を受けたい。
既に家庭で先取り学習を進めていたお子さんの中には、塾の授業にそんな感想を持つ方もいるかもしれません。
大手の塾では小1からクラスが用意されてはいますが、まだ学習は本格化していません。これらのクラスでは、まず机に向かう習慣や、問題を解く習慣を身につけるところから指導が始まるからです。
そこで気になるのが、一学年上のクラスの授業を受講する「飛び級」制度です。進学塾の授業を飛び級で受講することは可能なのでしょうか。
関西と関東で違う飛び級制度
進学塾での飛び級が可能かは、首都圏と関西圏とではっきり分かれています。
首都圏では、SAPIX、四谷大塚、日能研など、大手塾で公式に飛び級を認めているところは、残念ながらありません。これは本来の学年通りに受講をしても十分に先取りをしているから、というのが最大の理由ですが、囲い込みという側面が全くないわけではありません。
一方関西では、大手の浜学園、希学園などが飛び級を制度として認めており、特に灘中志望者の中ではよく聞かれる制度となっています。それらの塾では、飛び級を終えた新小6生向けに、専用の講座を用意しているところもあります。
これらの塾での飛び級の認定基準は公開されていませんが、基本的には「飛び級先のクラスの受講資格認定試験で、合格点を取れるか」が基準のようです。これらの塾で飛び級を希望される場合は、対象になる公開テストを問い合わせれば教えてもらうことができるでしょう。
飛び級におすすめの時期と飛び級のリスク
さて、飛び級可能な塾が近くにあり、実際に我が子を飛び級させようかと考えるなら、まだ塾のカリキュラムが本格化していない低学年のうちが現実的です。
特に、小1の段階では、早生まれの子とそうでない子は、同じ学年の中でも1年近い差があるわけですから、月齢の早いお子さんにとっては、一学年上の講座に入ったとしても、ギャップは小さいといえるでしょう。小2~小3でも、まだ塾での学習ペースには余裕がありますので、家庭学習が進んでいるお子さんなら飛び級資格を得ることは可能でしょう。
小4以降で受験コースの授業が本格的に始まってからは、飛び級資格を得ることはなかなか大変かもしれません。もちろん、それまでの家庭学習が非常に順調であれば不可能ではないと思いますので、挑戦されるのも良いかと思います。
ただし、飛び級にはリスクがあります。
最大の問題は、理解不足です。どの進学塾のカリキュラムも、本来の学年で受講していても十分なほどの先取りをしています。塾で習う単元は、それぞれ理解するのに適切な年齢をよく考えた上でカリキュラムが組まれていますので、それを過度に超えた先取りは、理解がついていかない危険性があります。更に、飛び級しているということは、自分の本当の学年の講座が受講できないということですので、飛び級先で、「一学年上の内容だから今は完璧に理解できなくてもいいか」と油断していると、それを後でカバーする機会がなくなってしまいます。
逆に飛び級先で受験生と同じペースで頑張りすぎて、実際に小6になったときに燃え尽きてしまう子もいるかもしれません。塾のカリキュラムは、ペース配分まで含めてその学年に適したように作られているということをよく理解しておく必要があります。
ですから飛び級をさせる場合は、親がよく注意して子供の成績を把握し、いつでも本来の学年に戻るという選択肢を頭に入れながら行う必要があるでしょう。
通信添削の飛び級は、リスクのない学習が可能
さて進学塾ではこれだけのリスクがあり、厳しい認定資格を必要とする飛び級制度ですが、意外にも通信添削教材では、自由に飛び級できるところが多いです。
Z会の中学受験コースなどは、大手進学塾に遜色ない内容のコースもありながら、「一学年上の講座を受講したいです」と言えばあっさり認めてもらえます。
科目選択も塾に比べて自由なところが多いので、「算数だけは得意科目なので、一学年先の学習をしたい」などと自由に選ぶことができます。もちろん、今の塾と併用しながら先取りをすることも可能ですから、通塾での飛び級に比べると、気軽に上の学年の学習に触れることができるでしょう。
各講座の教材の進度が気になる場合は、自分の本来の学年と一つ上の学年の教材を資料請求して、自分にあった学年や講座を検討することもできます。通塾に比べて時間的・経済的負担も少ないので、飛び級の選択肢の一つとして、有力な方法といえるでしょう。